2015年5月25日月曜日

アメリカとイギリスの博士課程の違い

アメリカとイギリスの博士課程を受験しましたが、
選考方法にも博士課程の内容にもいろいろと違いがあり、
気が付いたことを並べてみました。

1.アメリカは学士取得後、すぐに博士課程に入ることができる

日本でdegreeを取得するためには学士→修士→博士と、順に取得していかなければなりません。
基本的にイギリスも同じだと思います。
それに対し、アメリカでの修士というのは、卒業後就職する人が取得するものという位置づけであり、
「研究」をするためには修士を経ずに学士→博士という道を歩むことになると思います。
そのため、日本やイギリスでは博士号取得には3年から4年かかるところ
アメリカでは5年、6年を想定しています。
もちろん、アメリカにおいても修士をやった後に博士号を取得することも可能だろうし、
博士号を取得後就職という場合もあります。

2.英語試験

アメリカでもイギリスでも、授業は英語で受けるため、英語が理解できるということを
大学に証明しなければなりません。
そのために、TOEFLやIELTSを受けなければなりません。
TOEFLを受けるのが一般的ですが、私の年にはTOEFL試験での不正が発生したため、
TOEFLの信用がなくなってしまい、大学側がIELTSしか受け付けないということがありましたので、
受験する際には確認してください。

イギリスではIELTSを推している印象を受けました。
試験内容的にはTOEFLもIELTSも似たようなものですが、IELTSは2日かけてやるのと、
スピーキングの試験が面接官と直接面と向かって1対1で座ってやる、という違いがあります。
IELTSの方が若干やさしめの印象を持ちました。

3.筆記試験

イギリスではあまり聞かれないかもしれませんが、
英語の試験以上にアメリカで重要視されるのがGREです。
日本でいうセンター試験のようなものと思えば良いと思います。
GREは2種類あり、一般的なものと専門的なものがあります。

一般的なものには数学と国語があり、どちらも170点満点です。
数学・統計に進もうと思われる方は数学は170点近くとるのが当たり前だと思います。
おそらく日本でいう高校までの数学をやっていれば、十分なレベルのものです。

国語はやはりアメリカ人向けの試験ですから、
英語を母国語にしない人にとっては難しいと思います。
あくまで噂ですが、海外からの留学生に関しては国語の点数をあまり重要視しない、
ということもあるとかないとか。
もちろん、高得点を取るに越したことはないですけど。

それ以上に重要視されるのが専門分野のGREです。
これは年に数回行われる専門分野の試験で、
数学に関しては大学レベルの数学が題材になります。
990点満点です。

数学に関しては、解析学からの出題が多いようですが、代数学・幾何学からも出題されます。
内容に関しては口外してはいけないので、控えますが
時間内にすべてを解くのは結構難しいと思います。
物理では990点満点を取っている人がいるようですが、数学ではあまり聞いたことがありません。

そして、私の記憶からすると、問題を間違えると減点されます。
点数が与えられないのではなく、点を引かれてしまうのです。
なので、わからない問題は当てずっぽうではなく、答えないのが良いかと思います。
ただ、結果は一番良い点数を採用できるはずなので、何回でも受験可能だと思います。
(制限があるかもしれませんが、あっても緩かったと思います。。。要確認ですが)

そして、試験会場は日本全国で3か所ほどしかありません。
私の場合、福岡で受けようと思ったらもう埋まっていて、沖縄で受けることになりました。
受けると決めたら、早めに申し込みましょう。

参考書としてはこちらが良いようです
(むしろ、他に見当たらない、という方が正確かもしれません)
http://www.amazon.com/Cracking-Mathematics-Subject-Test-Edition/dp/0375429727

7 件のコメント:

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  2. はじめまして。
    同じく入社8年目で、現在博士課程留学を考えている者です(理系院卒)。機会学習か最適化アルゴリズム研究の領域での修学を望んでいます。

    最近までITエンジニアとして海外赴任して、今春3年ぶりに帰任しました。日本国内での博士号取得もしくはアメリカ留学を検討していましたが、博士号取得までの期間がアメリカに比べ短いという理由で、イギリス留学についても視野に入れてみようか思案しているところで、本ブログを発見した次第です。宜しければ以下についてもご教授頂けると大変参考になります。

    1) イギリスの大学では、30半ばで博士課程へ進む学生は多いのでしょうか。アメリカでは一般的と聞きますが、これはイギリスでも同様なのでしょうか?

    2) イギリスで研究環境はいかがでしょうか?
    私は研究職ではありませんが、製品開発に関連して技術系の特許や論文は書いております。本格的に研究するのは7年ぶりとなるのですが、アメリカ同様教育や研究指導は充実しているのでしょうか?教授次第というのもあるとは思いますが、分かる範囲でご教授頂ければと思います。

    3)イギリスの大学への博士課程からの入学は、一般的にアメリカの同レベルの大学より難しいという印象でしょうか?アメリカではなくイギリスの大学を選ぶメリットを、修学期間以外にありましたらご教授下さい。

    どうぞ、よろしくお願い致します。

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    1. casterさん、

      はじめまして、こんな不定期なブログですが、読んでいただきありがとうございます。
      残念ながら、私はアメリカの大学院や他の学部に所属したことがないので、
      参考程度にお願いします。

      1)
      私の学部では少なくとも1人30代の方がいらっしゃいます。
      アメリカの大学院ではどれほどの割合なのかわかりませんが、
      それに比べると多くないのかもしれません。
      ただ、会社に勤めてから大学に戻ってくる人は多い、とは聞きます。
      それが「イギリスでは」ということなのか、「世界的に(要するにアメリカ)見て」ということなのか、
      わかりませんが。。。

      2)
      大学にもよると思いますが、私の在籍しているところは思ったほど良いです。
      今では当たり前なのかもしれませんが、図書館は24時間開いてますし、
      数値計算のサーバーにも家からアクセスできます。
      数学系のソフトMATLABやMathematicaは無料で自宅のパソコンにダウンロードできますし、
      Microsoft Officeもタダです。

      研究に関しては、博士課程なので、指導教官が手とり足とり教えてくれるわけではありません。
      ただ、私の場合は週1で指導教官とのミーティングがありますので、
      指導教官が3か月放っておいたら、何の成果も挙げられなかった、
      ということはありません。
      自己管理が必要にはなりますが。

      授業に関しては、年初に指導教官と何を取るか決めます。
      博士課程は授業に出て、テストで良い点を取るのが目的ではないので、
      これも必要最低限です。
      自分が取りたい授業が他にあれば、勝手に出席することができます。
      他の学部の授業も受けられるので、その点では充実しています。

      授業のほか、いろいろなセミナーが週1で開かれていますが、
      セミナーは最先端の研究に触れる良い機会だと思いますので
      出席するようにしています。
      セミナーは研究において大事な部分だと思いますので、
      この点、他の大学でも充実していると思います。

      3)
      「難しい」というのは、受験に際し、ということでしょうか。
      受験に関していえば、個人的にはイギリスの方が易しいと思います。

      アメリカに関していえば、競争率が高いです。
      全世界の精鋭たちがアメリカの大学院に入ろうとしています。
      おそらく小さいであろう外国人枠に多くの人が応募してくるわけです。
      頭の良い日本人は多くいますが、それだけでアメリカの大学院に入れるわけではありません。
      GREで短時間に多くの問題を正解しなければなりませんし、
      有名な先生方から多くの推薦状を得ないといけません。
      そういうアメリカの大学院に入る準備を長年してきた人々と(受験で)競い合わなければなりません。
      社会人経験がその分野の研究に対してプラスになれば、
      他の受験生からの差別化ができるかもしれませんが、
      どちらにしろアメリカの競争率はイギリスのものよりも高いと思います。

      残念ながらイギリスを受験するメリットといえば、挙げられるものはそれぐらいだと思います。
      ただ、研究に関していえばイギリスもデータサイエンスに力を入れていますし、
      (まだ劣るかもしれませんが)アメリカ相当の勉強・研究ができるのではないかと思います。

      一度書いた回答が間違ってすべて消えてしまったので、
      良い回答ができたかどうかわかりませんが。。。
      不明な点がありましたら、質問してください!

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    2. ご回答ありがとうございます。イギリスの大学の雰囲気が少し分かったように思います。もう一点お伺いさせて下さい。

      日本では、勤め先を退職して30オーバーで博士課程へ行くデメリットとして、その後の就職先が見つかりにくいというのが一般的に言われるとことかと思います。この点、(留学経験者の方々のブログを読む限り)アメリカは採用に体する年齢差別への厳しさもあり、博士号取得後の就職先を見つけるハードルは日本と比して下がるようですね。同じリーガルコードの英国もまた採用時の年齢ハードルについては寛容なのかが気になるとことです。ブログ主様は博士課程取得後の就職先については、どのような展望をお持ちでしょうか?お時間あるときにご教授頂けると幸いです。

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    3. casterさん、

      確かに博士取得後の就職というのは、卒業するときには40歳近くになっている可能性があるわけですから、
      心配といえば心配です。
      この辺は正直、よくわかりません。
      アメリカはその点気にしないとは聞きますが、
      実際それが本当なのか、イギリスでも同様なのか。
      あまり直接話を聞いたことはありません。

      これは本当に個人的な「見解・考え方」になってしまいますが。

      1.博士課程の3年・4年を遊びに使っていたわけではない
      この年になって博士課程に進む、というのは結構大きな賭けです。
      ただ、それは「仕事がつまらなかった・大変だったから、やめて大学に行くことにした」
      という「逃げの」理由ではなく、目的をもって学びに来ているということです。
      普通の大学ですと、ある意味無駄な教科の単位などを取得する必要があったりしますが、
      博士課程は専門的なもので、論文書くなりそれなりの成果をあげて初めて卒業できるものです。
      少なくとも海外ではそれに対し、否定的な意見は出ないような気がします。

      2.ランダムな学位を取ろうとしているわけではない
      金融やってたのに、今から歴史学の博士課程に進みます、
      ということであれば、今後のキャリアに疑問符が付くと思います。
      歴史学を学ぶということが悪いということではなく、今までのキャリアがあって、
      なぜここで歴史学なのか、ということです。
      (そして、なぜまた就職か、ということ)
      少なくとも就職の面接で質問されるでしょう。

      金融やっていて、金融数学の博士課程に進みました。
      成果をもって、再度同じ業界に就職に来ました
      これは目的がはっきりしています。
      私だけかもしれませんが、個人的にはこれだけで金融、およびこの業界におけるキャリア
      に対する情熱が伝わってくるような気がするのですが。
      さらに、博士取得であれば専門的な知識もあるはずなので、
      すごく魅力的なapplicantになると思います。

      3.今までのキャリアはゼロではない
      私も短くはない社会人経験を持っていますが、
      博士課程に行ったからといって、その経験がゼロになるわけではありません。
      たとえ博士課程がうまくいかなくても、今までのキャリアはまだあります。
      同じ博士課程卒業する人よりも年齢はちょっと上かもしれませんが、
      その若さに打ち勝つ経験があります。その自信もあります。

      そして。
      よく「若い人とそうじゃない人がきたら、若い人を雇うでしょう」と言われますが、
      仮に若い人が1000人来たとき、そうじゃない人は何人来るでしょう?
      社会人経験があって、博士課程を修了した、専門知識のある「そうじゃない人」も1000人来るでしょうか?
      おそらくもっと少ないんじゃないでしょうか。
      会社的にはそうじゃない人を一人入れてdiversifyした方が良いと考えられる気がします。
      なので否定的になる必要はないと思います。

      4.人生設計
      私は社会人経験から自分の知識不足も経験しましたし、ある事象をもっと研究したいと思いました。
      それで今の私があります。
      修士を取得後すぐに博士課程に行ってたら、と思うことがときどきありますが、
      そうなってたらとんでもないことになっていたと思います。
      というのも、社会人経験がなければ知りえなかったことがありますし、
      そこで初めて研究したいと思えるトピックに出会えたからです。
      今までの社会人経験なく博士課程に進んでいたら、面白くもないトピックを延々と研究し続けることになったでしょう。
      確かに、もう数年早く留学していても良かったかな、と思ったりもしますが、
      今でほぼベストタイミングだと思います。
      定年退職が65とかですから、働きたいのであれば卒業してもあと25年以上あります。
      その中の数年なんて、時間的には大したことはないです。
      ただ、まだ若いうちに研究を含めたいろいろな経験ができるというのは貴重なことですし、
      その経験を活かすのにあと25年以上あると思えば
      楽しみ以外の何物でもありません。

      何か想像・願望的なものが多くありましたが、以上が私の考えです。
      楽観的すぎるかもしれませんので、他の否定的な方々の意見も聞いてみるとちょうど良いかもしれません。
      ご質問にちゃんとした回答ができているか不安ですが、
      また何かあれば質問してください。

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  3. 丁寧にお返事ありがとうございます。大変参考になりました。ご回答にブログ主様のポジティブで硬い意思を感じました。希望や願望の伴わない選択なんてありませんし、仰られている展望は理にかなっていると思います。個人的には楽観的過ぎるとは思いません。
    タイミングにしても、知識経験が蓄積されかつ(個人差はあると思いますが)元気がまだ有り余っている30過ぎは、ある意味ベストタイミングと言えると思います。
    リクルータをしていても思いますが、どんな不況下でも優秀な人はあっとう間に内定もらいますし、あまり卒業後の求職の有利不利を案ずるより、明確な目的と行動力をもって自分の進むべき道を進むのが良いと思います。
    私も目的とすべきことを明確にして次のアクションを定めたいと思います。
    ブログ主様のこと、日本より応援しております。

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  4. casterさん、

    コメント頂き、ありがとうございます。
    熱血っぽい感じで力説してしまって、少々恥ずかしいですが。。。
    いろいろと他にもお伝えしたいことがあるのですが、
    それはおいおい不定期にブログで書いていきたいと思います。

    留学することが必ずしもどの尺度から見てもプラスということはないかもしれませんが、
    知識や研究技術の習得という意味ではどう転んでもプラスのはずです。
    留学準備(試験など)の負担や日本の博士課程との比較など、いろんな尺度で見るのが良いと思います。
    私もイギリスからcasterさんを応援しております!

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